ガス溜まり方で分かる!腸のレントゲン写真からわかる7つのこと

健康

レントゲンからわかる腸の状態

腹部のレントゲン検査は、医療現場で最も頻繁に行われる画像検査の一つです。腸の病変や異常を発見するのに非常に有用な検査ですが、レントゲン写真を見ただけでは一見わかりにくいところもあります。

 

しかし、腹部のレントゲン写真にはガスの貯留具合や位置から、腸の状態を推測できる重要な情報が隠されています。腸管内のガス像の見方を理解することで、腸閉塞やイレウス、穿孔などの異常を早期に発見することができるのです。

 

本記事では、腹部レントゲン写真から読み取れる腸の状態について、ガス像に着目しながら分かりやすく解説していきます。ガスが溜まり方や形状の違いから、どのような情報が得られるのか、具体的な症例を交えながらご紹介します。レントゲン写真の見方に自信が持てるよう、丁寧に解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

レントゲンからわかる7つのこと

1. 胃・小腸・大腸に溜まるガスの違い

腹部のレントゲン写真を見る上で、まず理解しておきたいのが、胃・小腸・大腸でガスの溜まり方が異なるということです。これらの消化管はそれぞれ異なる役割を担っているため、正常な状態でもガスの分布に違いがあります。

 

胃は食べ物や空気を一時的に溜める器官ですので、普通は少量のガスが存在するのが正常な状態です。しかし、過剰にガスが溜まっていれば何らかの異常が考えられます。一方、小腸は主に消化吸収を行う器官で、基本的にはガスがほとんど見られないはずです。小腸にガスが溜まっているようであれば、異常の可能性が高くなります。

 

最後に大腸ですが、大腸にはガスが存在するのが通常です。なぜなら、大腸内での腸内細菌の働きにより、ガスが発生するからです。つまり、大腸にはガスが見られることが正常な所見なのです。ただし、過剰なガス貯留は大腸の異常を示唆する可能性があります。

 

2. 3-6-9のルール: 腸の拡張の判断基準

腸管が拡張している場合、それは異常な状態を示す重要なサインとなります。ここで覚えておきたいのが、「3-6-9のルール」と呼ばれる腸の拡張の判断基準です。

 

小腸の場合、径が3cm以上に拡張していれば異常な状態と判断できます。一方、大腸に関しては、径が6cm以上に拡張していれば異常です。さらに、大腸の一部である盲腸が9cm以上に拡張していれば、非常に危険な状態となり、盲腸穿孔のリスクが高まります。

 

こうした腸の拡張は、腸閉塞や癌による閉塞、腸穿孔など、重篤な病態を示唆する可能性があります。レントゲン写真から腸の太さを測定し、3-6-9のルールに当てはめることで、素早く重症度を判断する手がかりとなるのです。

 

3. ガス像の形状でわかる小腸か大腸か

腹部のレントゲン写真を見た時、ガスの像を見てすぐに「これは小腸のガスなのか、それとも大腸のガスなのか」がわかれば、病態把握がぐっと早くなります。そこで重要になるのが、ガス像の形状の違いを見分ける力です。

 

小腸のガス像は細かいひだひだ状になっており、これを「ケルクリング膝」と呼びます。一方、大腸のガス像は太くてゴツゴツしたひだひだ状で、「ハウストラ」と呼ばれる構造によるものです。このように小腸と大腸では、ガス像のひだひだの太さや細かさが異なります。

 

慣れていけば一目でガス像の違いに気づけるようになりますが、最初のうちはガス像を見て「ケルクリング膝なのかハウストラなのか」と意識的に判断する練習が必要でしょう。ガス像の形状を識別できれば、病変部位の特定が容易になります。

4. 液面形成(二重腸管像)で腸閉塞の可能性

腸閉塞の有無を判断する上で、レントゲン写真における液面形成(二重腸管像)の所見が重要な手がかりとなります。液面形成とは、液体と空気(ガス)の境界線が腸管内に現れる所見のことです。

 

立位での撮影で、この液面形成が3本以上認められる場合、腸閉塞の可能性が高くなります。液面形成が複数本見られるということは、腸管内での通過障害によりガスと液体が貯留していることを示しているからです。

 

液面形成の数だけでなく、その形状にも注目が必要です。通常、液面形成は水平に現れますが、閉塞部位の手前では液面形成が湾曲していることがあります。こうした湾曲した液面形成を認めた場合も、腸閉塞を強く疑う所見となります。

 

5. フリーエアで消化管穿孔の可能性

レントゲン写真上で腸管外にガスが見られる所見を「フリーエア」と呼びます。通常、ガスは消化管内にのみ存在するはずですので、腸管外にガスがあるということは、消化管が何らかの原因で穿孔(穴が開いている)状態になっている可能性を示しています。

 

フリーエアは立位撮影で見つけやすく、特に肝臓と横隔膜の間に認められることが多くなります。なぜなら、立位では空気が上部に集まる傾向にあるためです。臥位撮影でも側面から撮影する「クロステーブル撮影」によってフリーエアを検出できる可能性があります。

 

消化管穿孔は重篤な病態であり、早急な治療介入が必要となるケースが多いです。そのため、フリーエアを見逃さずに指摘することが重要になってきます。穿孔の疑いがある場合は、CTなどの追加検査を行って確定診断を行う必要があります。

 

6. ガス欠如(ガソリンスタンドサイン)で腸閉塞の可能性

正常な状態であれば、大腸にはある程度のガスが存在するはずです。しかし、大腸にガスが全く見られない場合、これを「ガソリンスタンドサイン」と呼び、腸閉塞の可能性が疑われます。

 

ガソリンスタンドサインが現れる理由は、大腸が何らかの原因で閉塞し、そこを通過するガスが存在しなくなってしまうためです。従って、大腸にガスが全く見られない所見に遭遇した際は、注意深く観察し、他の所見と合わせて腸閉塞の有無を検討する必要があります。

 

ただし、この所見のみで即座に腸閉塞と断言することはできません。大腸にガスが見られないのは、単に撮影のタイミングによる一時的な状態である可能性も考えられるからです。そのため、患者の症状や他の画像所見とも照らし合わせる必要があります。

 

7. 撮影体位による違い

腹部レントゲン検査では、主に「立位」と「臥位(両替)」の2つの体位で撮影が行われます。撮影体位によって、得られる情報に違いがあることを理解しておく必要があります。

 

立位撮影の利点は、液面形成やフリーエアが見つけやすいことです。立位では重力の影響で空気が上部に集まるため、こうした所見が明瞭に映し出されます。一方で、解剖学的位置関係が実際の診察時とはずれてしまうというデメリットもあります。

 

対して臥位(両替)撮影は、臓器の位置が自然な状態に近いため、解剖学的位置関係が判りやすく、診察所見との対比がしやすくなります。しかし、液面形成やフリーエアは臥位ではわかりにくい傾向にあります。

 

このため、理想を言えば立位と臥位の両方を撮影し、互いの長所と短所を補うことが望ましいと言えます。状況に応じて適切な体位を選択し、立体的に腸管の状態を把握することが重要なのです。

まとめ

腹部レントゲン写真から腸の状態を正確に読み取るためには、腸管内に溜まったガスの量と分布に注目することが肝心です。ガスの溜まり具合や形状の違いにより、腸閉塞やイレウス、穿孔といった病態を発見できる可能性があります。

 

液面形成の有無、フリーエアの存在、ガソリンスタンドサインの確認など、ガスの所見から得られる情報は多岐に渡ります。さらに、撮影体位による違いも考慮する必要があり、立体的に腸の状態を把握できるよう意識しましょう。

 

ガス所見はレントゲン写真を読影する上で重要なポイントです。これらの見方を押さえることで、医療従事者がより確実に腸疾患の有無を判断できるようになり、適切な治療へとつなげられます。

 

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